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5.俺はとてつもない能力者だったようです
対策しようのない憂鬱な事は、メシを食ってさっさと忘れるに限る。
いつもの大味で量の多い異世界メシをかきこんだ俺は、ロクを部屋で寝かせてブラックと一緒に練習場へと足を運ぶことにした。やることないしな。
紫狼の宿には曜術師の為の練習場があって、沢山の初心者がそこで鍛錬を積んでいる。ゲームの世界では練習場なんて初期の初期にしか出てこないけど、この世界ではそうも行かない。
ゴシキ温泉郷みたいな特殊な場所でもなけりゃ、思いっきり練習できる場所なんてそうそう見つからないのだ。
にしても、俺ってばホイホイ乗せられちゃってなんだかなあ。
「あのさー、そりゃ俺木の曜術師とかって言われてたけど、自分にどんな力があるとか別にどうでもいいんだけど」
「どうでもって……いいかいツカサ君、もしキミが曜術師だったら、キミの生活は今から劇的に変わる事になるんだよ」
「……どゆこと?」
「つまり……」
ブラックの説明は、こうだ。
もし曜術師の素質があれば、認定試験に受かる事で自分の籍を【曜術師】として登録できる。つまり、出自や身分は関係なく、誰もが無条件で曜術師として籍を貰えるのだ。だから、能力が高ければ王族の側仕えにだってなれる可能性が有る。
普通、奴隷や籍のない人間が籍を貰う為には、身分の高い人に頼んで手続きをしなくてはならない。そんな人と知り合う機会もない蛮人街の人間にとって、これが一番簡単な身の証を立てる方法になるという訳だ。
それに、ファンタジーではお馴染みのギルドにも登録できるようになるとか。
「ギルドに登録すれば色んな場所に行けるし、何より図書館に自由に入れる。お金だって、本一冊ラクに買えるくらいはたまるよ」
確かに、今の俺にとっては魅力的な未来だ。
でも、こんな美味しい話をべらべら喋るのって……あやしい。
「オッサン、何で俺を曜術師にしたいのか正直に言え」
「えー。だって曜術師になればギルドに登録できるし、そしたら僕が君を身請けして逃亡……いや、一緒に旅ができて、そしたら楽しいなあって思って」
「オイコラ!! 逃亡って!」
やっぱりロクなこと考えてなかった!!
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