2.ほのぼのキャンプご一行

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2.ほのぼのキャンプご一行

     太陽が少しずつ西に落ちて行く。  何も高いもののない広い草原では、陽の傾きがかなり明確に感じられるようだ。並走する俺達の影もだんだんと伸びてきて、辺りも橙色に色づいて来ていた。  だいぶん走ったけど、まだまだ山に登るには遠いようだ。  ――昼食をとった後、俺達はまた馬上の人となっていた。  河原にキャンプを張ればいいのではと思ったのだが、あの場所は夜になるとモンスターの水飲み場になるらしくて危険なのだそうだ。  冒険者をしているからか、ブラックはそう言う事に詳しい。    正直な話、河原に泊まってブラックが戦ってる所を見てみたかったんだが、隙を突かれてモンスターにムシャムシャされては敵わん。命あっての物種ってことで、ブラックの案に素直に従った。  あの捕食植物みたいなのにまた出会うとも限らないもんな。  アレに比べたら、オッサンとタンデムのがまだマシというものだ。 「で、野宿すんのってどこ?」 「山のふもとの森だよ。あそこには野宿用の整備された平地があるんだ。徒歩で山を登る人もいるから、休息地として井戸だとか調理台とかもある」  キャンプ場じゃん。と口から出かけたが、必死で呑み込む。  この世界にない単語を出したら、変に怪しまれちまう。そうじゃなくても、不思議ちゃんだねとか中二病だねとか思われかねない。物事に独特な名前を付けようとする奴は、どんな世界でも危ない奴にしか思われないはずだ。  流石にもう怪しい人間呼ばわりはされたくない。  異世界までやってきて、なんで冷たい目で見られる必要があるんだ。 「もうこうなったら平穏無事に暮らすしかない平穏無事に暮らすしか……」 「何を言ってるんだい。ほら、ついたよ」  ぽん、とまたケツを触られたが、一々突っかかるのも疲れた。お尻痛い。  再び無様な格好で馬から滑り落ちた俺は、よろめきながらも周囲を見回す。こう言っちゃなんだが、休息地は手入れされてないキャンプ場のようだった。  
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