手ほどき 1

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 後宮の妃や姫ぎみたちを慰めるために、回廊や窓辺には花が壺に活けられ飾られている。わたしは大輪の赤い花に隠れるようにしてある小さな白い花に姫の姿を重ねた。控え目で目立ちはしない。けれどよく目を凝らせば微小な花弁が重なりあい、美しいものだと気づく。神はけっして手を抜きはしないのだ。  焦がれるように待ち続け、一月(ひとつき)を前にして、わたしは呼ばれた。
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