(一)

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 面接では思った以上の好感触で、有期契約社員としての入社が決まった。有資格者として、好印象を持たれたようだ。  ハローワークの担当者が口酸っぱく勧める、エコ検定なるものがあった。 「邪魔になるものでもありませんし、是非お取り下さい。私としては、エコ検定をお勧めします。大丈夫です、専門知識は不要ですから。問題集も出ていますし、常識問題ばかりです。こうした資格というのは、案外と再就職に有利に働くものですよ」  神妙な顔つきで頷いてはみたものの、心内では“受験だって? 何で今さら…。勘弁してくれよ”と舌打ち物だった。しかし再就職に有利に運ぶと聞くに至って、取得を決めた。  正直の所、半信半疑だったけれども、これが見事にはまったわけだ。ありがたくて、ハローワークの担当者には、感謝感謝だ。あちらに足を向けて寝るわけには行かない。 「フォークリフトの運転は…」  工場内を案内してくれる主任が問いかけてきた。わたしは嬉々として「はい、前の会社で運転してました」と答えた。 「いやあ、そうですか。それはありがたいです。それじゃ、免許証を初出社時にお持ち下さい。コピーを取らせて頂きたいので」 「免許ですか? あるとは聞いていますが、無しで運転していました」 「それじゃ、だめですね。うちの会社では、免許がないとだめなんです。そうですか、それは残念だ。あ、でもご心配なく。山本さんにお願いしたい部署では、必要がありませんから。持ってみえたらいいなあ、という程度のことですから」  明るく笑ってくれる主任の言葉に、ホッと胸を撫でおろした。このことで採用が取り消されては、たまったものじゃない。結局、給料の締め日の関係で、四日後からの出社となった。
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