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螺旋階段みたいに物語は進む
一方、出版社から来た奄美勇気氏に回顧録を渡した金子隆太は、その翌日の2020年2月14日、篠山理恵を訪ねたところ、恐喝者が何者かに拳銃で射殺されていた。その恐喝者こそ、彼から手紙を奪ったホテルマンであった。彼の上着には「幻影館 金曜日11時45分」という紙切れが残されていた。
「金曜って言ったら今日じゃねぇか?」
篠山理恵を何らかの理由で幻影館に行かせたくない者の仕業と考えた金子隆太は、彼女を予定通り幻影館に向かわせる。
その間に死体と拳銃を始末して、自分も幻影館を訪れたところ、まさに11時45分、館の中から銃声が聞こえた。
翌朝、幻影館で、滞在客である酢谷検事の射殺体が発見される。警視庁から到着した闘竜警視に亘理は、酢谷は偽名で、その正体はリュート王子だと告げる。
シティホテルに宿泊していた金子隆太は、嫌疑をかけられていることを察知し、自ら幻影館に乗り込み、中村トオル名義で回顧録を届けに幻影館に来た事情を説明し、疑いを晴らす。
さらに、鎌倉王の第2王位継承者であるケント王子が、アメリカの資本グループに石油の利権を与える約束をしているという情報がもたらされる。
リュート王子を殺した犯人、回顧録の行方、鎌倉の石油の利権をめぐる各国の対立、王位継承問題、王制支持派と赤原党の対立、幻影館のどこかに隠されている宝石を狙う城戸と彼を追う韓国の刑事など、事件はさまざまな問題を抱えながら展開してゆく……。
2月16日 午後8時
幻影館の2階にある自室で、赤原は全身を10ヶ所刺されて殺害されていた。
血の海に横たわる赤原の死体を見て、金子は吐き気と闘っていた。
「オリエント急行殺人事件に似てねぇか?」闘竜警視が言った。
「あぁ、アガサ・クリスティーの名作ですよね?」
篠山理恵が言った。
列車がヴィンコヴッイとブロドの間で積雪による吹き溜まりに突っ込み立ち往生する中、翌朝、ラチェットの死体が彼の寝室で発見される。
彼は、何らかの刃物により全身を12か所に渡ってメッタ刺しにされて殺害されていた。
現場には燃やされた手紙が残されており、そこから解読されたのは「小さいデイジー・アームストロングのことを忘れ」という言葉だった。
ラチェットはかつて、富豪アームストロング家の令嬢である幼いデイジーを誘拐して殺害した犯人だった。
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