prologue

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友人の彼氏の友達。 私と純一は、そんなよくある設定で出会った。 明るくて優しくて本当にいい人で、思えば最初から好印象だったんだと思う。 だから純一から告白された時は、何の迷いもなく受け入れた。 けれどそれが間違いであることに気が付くのに、長い時間はかからなかった。 私は純一を友人として好きだったのであって、男として好きだったわけではなかったのだ。 けれどそんな気持ちに気が付いたところで、『やっぱりナシ』というわけにもいかない。 だって彼は本当に私を想ってくれているのだから。 こんなに素敵な人なのだから。 こんなに人としては好きなのだから。 付き合っていくうちに、きっと本当の意味で純一のことを愛せるようになる。 私はそう思って今まで彼との付き合いを続けてきた。 しかし人間の気持ちはそう思うようには変えられない。 純一の私に対する気持ちが大きくなればなるほど、私の心は次第に冷めていくようになってしまった。 結局私は純一との気持ちの差を埋められることなく、この結果を迎えてしまったというわけだ。 「純一。これだけは誤解しないで欲しいんだけど……。私は純一となんとなく付き合ってたわけじゃないの。純一がどう感じていたのかはわからないけれど、私は純一のこと、本当に好きだったのよ?」 それが男女間の愛情ではなかったとしても、人として彼を好きだったことに偽りはないのだから。
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