729人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日、やはりグラウンドには竜の姿はなかった。
さすがに一人では練習ができないので僕は、今日は勇平の所に行った。
「勇平、大丈夫か?」
僕は勇平に聞いた。
「あぁ、大丈夫だよ。ところで病気の事親父から聞いたんだってな。」
「ぅん、ごめんな。」
「ぅん?何が。」
「気付いてやれなくて。」
「いゃ、こっちこそ、言わなかった、いや、言えなかった。」
「何で?」
「お前と竜を見てると、もう少しこのままでいたいって思ってさ。」
「ハハっ」
「ところで竜は?」
「あぁ、今、一人で練習してるよ。」
「ふぅん、あまりオーバーワークしすぎるなよ。でも、お前は?」
「あぁ、俺は今から学校で練習するよ。キャッチボールの相手がいないし、ノックもできないからね。」
「ふぅん、悪いな。」
「ぅん、気にするなよ。じゃ、俺、行くから。」
言えなかった。竜が野球を辞めたなんて。
言ったら勇平は絶対竜の所に行くから。
こうなったら、俺は一人でも甲子園に行く。勇平と竜のためにも。
最初のコメントを投稿しよう!