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3年前・変遷
その日。
隣国が再び攻めてきたとの報せを受けて、ブランの剣士隊は国境の砦に構えていた。
「ガウィン。ジッと敵陣の逆を見つめてどうした?」
そんな風にクロムから声をかけられ、ガウィンはハッとした。
王都の凱旋の歓声を思い出していた。
人を斬る前に、人を斬る意味を心に刻み込んでいたためにだ。
だが、それを言葉にするのは気恥かしいものがある。
「何でもねェ」
と、ガウィンはクロムを突っぱねる。
その時、物見櫓の上から声が響いた。
ガウィンとクロムは急ぎ、城壁の上に登る。
すると国境の向こう側に敵の大群が見えた。
「……来やがった……」
ガウィンはそっと腰の剣に触れた。
攻城兵器、弓隊、槍隊、それに投石器も見える。
なかなかの大軍であった。
生きて、再びあの歓声を聞くことはできないかもしれない。
剣に添えてある手が、自然と震えている。
「行くぞッ」
友の叫びに、
「応ッ」
とだけ、ガウィンは答えた。
震えは力任せに拳を握って止めた。
その時だった。
「見苦しい。どいていろ」
そう言って城壁の上に登ってくる影がある。
誰だ?
ガウィンが見れば、ぞろぞろと祭事礼装姿の集団が現れ、それが一糸乱れぬ動きで横並びに広がっていく。
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