1年前・喪失

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1年前・喪失

いつしかガウィンは戦場を恐れるようになっていた。 そもそもガウィンが人を斬り捨てる覚悟を抱けていたのは、民を護る大義で罪悪感に蓋をしていたからだ。 民の感謝が、唯一、ガウィンの罪を正当化してくれていた。 だが、民の感謝はもうない。 時代の流れである。 新しい時代がきたワケだ。 魔法石により実用化された攻撃魔法は改良を重ねられて、その威力は日に日に増していく。 それに引っ張られるようにして、魔法以外の技術の発展も加速している。 なんでも隣国のネェロでは魔法石を撃ち出す魔法銃なるものや、機巧技術を使った戦車などが開発されているという。 新しい世界はもう、剣を必要としていないのである。 それに伴い、ガウィンが剣を振るう意義も(つい)えた。 ただ、血みどろの罪悪だけが残っているばかりだ。 だから、ガウィンは兵士を辞めたのだった。 「これからどうするのだ?」 城を出ていく日に、クロムから尋ねられた。 「王都を出て、近くの森に小屋でも建てるさ。獣を獲って静かに暮らす」 そう言って、ガウィンは逃げ去るように城を出た。
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