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幼馴染の伊藤から、僕の姉に似た人が動画サイトに出ていると電話をもらったのは、大学入学から三年目の春のことだった。
色々なことから塞ぎ込んでいて、どこにも出かける気が起きず、ずっと家に引き籠っていた。もともとアウトドア派ではないのだが。対して、伊藤は積極的で明るい性格であり、何事も器用にこなす様子から男女ともに人気があった。陰気で不器用な僕とは対照的で、幼馴染ということ以外には共通点はない。大学は違えども進学を機に一緒に上京したのだが、明るい伊藤には新しい友達がたくさんできたようで、もはや遊びに誘われることもない。その伊藤からの電話に、最初は戸惑った。
「悪い、いきなり電話して。寝ていたか?」
「いいや、起きていたよ。久しぶりだな。」
「久しぶり。悪いな、なかなか連絡できなくて。今度、遊ぼうな。」
おそらく社交辞令だろう。伊藤も、こんな陰気な僕とは遊んでもつまらないだろうし。
「で、いきなり何の電話だ?同窓会でもあるのか?」
「いや、違う。ああ、でもそれもいいな。俺らももう大学三年生だしな。就職前に一回会うのもいい。皆の現況も知りたいし。SNSとかで結構知っているけど、実際会って話したいことも多いし。」
意外に古風なことを言う。
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