姉に似た人

　伊藤の話していた動画サイトから、同じく伊藤に教えてもらった検索ワードを入力する。パソコンの画面におびえ切った表情の女の顔が映っている。再生すると、真夜中らしき時間帯で、廃墟の中で女が逃げまどい、仮面を被った男に刺殺される一部始終が映っていた。馬鹿馬鹿しい、とため息をついて天井を見上げる。この安全な日本でスナッフムービーなど撮影できるはずがない。ましてや、それをネットにアップするなど。

　スナッフムービーとは、要はリアルな殺人シーンや虐待シーンを撮影した動画のことである。当たり前だが違法だ。そんなものをアップしたら自分が殺人犯ですと言っているようなものだ。自首するに等しい。これは作られた画像に決まっている。

　逃げまどう女の顔をまじまじと見つめる。姉に似ていないこともない。セミロングの茶髪、暗い画面でもわかる派手な顔立ち、服装の趣味も近い気がする。気取った雰囲気のワンピーススタイル。そして踵の高いハイヒール。

　眞城涼子は僕の四つ上の姉であり、小学校から高校まで女王様と呼ばれるほどだった。成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗・・・才媛と呼ぶにふさわしい。東京の名門大学の経済学部を卒業し、外資系のコンサル会社に就職、ノウハウを学んだら独立することを考えており、今はそのための準備や勉強で忙しい。