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しかし僕は、彼女のことが嫌いだった。持って生まれた能力を鼻にかけ、ことあるごとに僕を馬鹿にしてきたからだ。僕の振るわない成績を見てため息をつき、陰気で友達がなかなかできないことを馬鹿にした。ことあるごとに隣の家の伊藤と比較し、伊藤君はいつも明るくて面白いのに、ああいう弟が欲しかったと文句を言った。僕が上京するときも、あんた程度の学力ならわざわざ東京まで行かなくてもいいわよと言い、東京駅まで迎えに来ることすらしてくれなかった。
僕とは反対に、伊藤は昔から姉に憧れていたように思える。もしかすると男女の恋愛感情すら抱いていたのかもしれない。その性格の悪さを露呈するのは僕の前だけであり、外から見ると姉は完璧超人だったのである。
再び動画に目を向ける。顔の造りはよく似ているが、姉ではない。逃げまどいおびえる姉の姿など今まで見たこともないし、想像もできない。僕の記憶の中にある姉の姿と言えば、ふんぞり返って僕を嘲笑う姿しかないのだ。その姉が、こんな陳腐な動画に出演するとは思えない。まあ、美人だから依頼がかかることはあるのかもしれないけれど、あの姉がそんな馬鹿な要求に応じるとは思えない。これが本物だったら?姉がいきなり拉致され、廃墟の中で刺されていたら?それはない、そんなことはありえないのだ。
悪臭が鼻をつく。ああ、換気しなきゃ。こんなくだらない画像を見つめている暇はない。くさい、くさい・・・。
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