プロローグ

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プロローグ

 彼は、暗闇の中にいた。 長い長い時を、大地の底で、途方もなく深い闇に縛り付けられて閉じこめられていた。  ヒトとしての彼の肉体は滅び、ほどけ、土塊となった。しかし、魂はいつまでも滅びなかった。  魂は生きたまま、黄泉の国の使者達の手によって封じられたのだった。  彼は恨み、憎んだ。自分を封じた者達を。自分を忘れていく人々を。  恨みは、長い時をかけて、彼の中で暗い輝きを宿す結晶となり、彼の魂は恨みそのものとなった。彼は、いつからか、この世そのものを強く恨み、憎むようになっていた。  恨み、憎む心は炎となり、いつか地上を焼き尽くすだろう。  その日を夢に見ながら、彼は暗闇と呪詛で塗りつぶされた眠りの中をゆうらりゆらりとたゆたう。 彼の名は、牟射志宿禰久老磨呂。  彼を目覚めさせることができるのは、ただ一人、赤い目を持つ者。蛇の神の力をその瞳に宿せし者。
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