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去年の夏までは、よくヒラリと一緒に飲みに行っていたように思う。
4月生まれのヒラリはとっくにお酒が飲めたこともあり、12月生まれの俺はウーロン茶で付き合うのが当たり前になっていた。
話題は半分以上、ヒラリの好きな人について。
後の半分は音楽の話。
彼女は、片想いの相手について熱く語り、その割に本人に声をかけるのも恥ずかしいと言って、その熱い想いを昇華させることも具現化させることもないまま、いつの間にかまた新しい恋の相手を探してきてはうっとりと話をするのが好きだった。
一年前、最初の恋に躓いてしまった彼女が、次の一歩を踏み出す気持ちになれなくて、恋に恋する気持ちを持て余しているのはよくわかったし、隣で見ているのも悪くなかったので、特にその席を投げ出したり、誰かに渡す気持ちにはなれなかった。
けれども、秋になった頃からめっきりそんな話を聞かなくなって、同時に彼女の俺に対する態度が悪化してきたように思えていた。
目をそらしたり、きつい言葉を投げつけてきたり。
それは、友情が深まった結果なのだろうか。
よくわからない。
美味しそうに肉厚のステーキをほおばっている姿を見ても、やっぱり何もわからない。
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