第1章

13/20
前へ
/256ページ
次へ
~会長(大輝)side~ 「昨日、転校生の迎えに行っただろう?書類を見た時は忘れてて気づかなかったんだけど実はその転校生と俺は昔、会った事があって……」 「そうなんですか?でも転校生……本村司(もとむらつかさ)君でしたっけ?彼の家はごく一般的な家庭ですよね?どこで会ったんですか?」 澪が驚いた顔で聞いてきた。 俺と澪は初等部からこの学園に通っている。直接的に関わるようになったのは中等部の生徒会に入ってからだし、この話は誰にもした事がなかったから知らないのも当然だ。 いつもは俺に辛烈な言葉をかける澪も俺の様子を見て真剣に話を聞いてくれた。俺は当時を思い出しながら話しだした…… あいつ、司に会ったのは俺が初等部に入ったばかりの頃だった。当時の俺は家を継ぐ気なんて全く無くって勉強ばかりの日々に嫌気がさしてた。 自分で言うのもなんだが両親は一人息子の俺をかなり溺愛していて、今思えば強制的に勉強させていた訳では無いのだろうけど、志藤グループの跡取りとしてある程度の勉強はしてほしかったのかもしれない。 しかし当時の俺には苦痛以外の何者でもなく、ある時、学園からの帰宅途中に嘘を言って車を停めてもらった隙に逃げ出したんだ…… 道なんて分からなくてとにかく捕まりたくなくて闇雲に走り回った。自分がどこにいるのかもどうやって着いたのかも分からなかったが、気づいたらある住宅街の中にある公園にいた。そこでは俺と歳の変わらない子どもたちが楽しそうに遊んでいた。
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1077人が本棚に入れています
本棚に追加