第1章

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その男の子に手を繋がれたまま公園に入っていくと最初に連れてこられたのはブランコだった。 男の子はブランコに俺を座らせると自分は俺の後ろに回り背中をそっと押しだした。 「いつもママがおしてくれるんだ!ぼくもおしてあげたかったけどママはぼくがたのしくしてるのがたのしいんだって!」 「そうなのか……ママは好きか?」 「うん!」 そのあとも母親と遊んだ時のことや作ってくれる料理のこと、たくさんのことを話してくれた。 子どもらしい表情で話している姿はとても可愛らしく見えた。しかし、それと反対に俺の気持ちは落ちていくばかりだった。 結局、男の子は自分で乗らずにずっと俺の背中を押し続けた。しばらくすると満足したのか今度は砂場にやってきて一緒に山を作ろうと言ってきた。 今まで砂で遊ぶなんてことはした事がなく、というかしようものなら周りから全力で止められていたであろうことをしている。 二人で大きな山を作りその周りの土を掘り、川らしきものを作り山へ繋げた。俺と男の子は山を挟み向かい合い、お互いの方から少しずつ山の下を掘り川を繋げようとした。 山を掘りながら男の子は今度は父親のことも話してくれた。仕事がお休みの日は必ずどこかへ連れていってくれること、足が速くて運動会で一緒に走って1位をとった時のこと。 男の子から聞かされる話は俺には縁のない話ばかりで最初は相槌をうちながら聞いていたが次第にそれもできなくなっていった。
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