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水族館が少し薄暗くて良かった。こんな状態を明るい中で見られていると思うだけで恥ずかしくてどうにかなりそうだった。
霧さんに手を繋がれたままやってきたのは深海の魚たちがいるエリアでここは今までの場所よりもっと暗かった。ライトがついているのは足元で順路を示すためのものと水槽を見やすくするために仄かについているものだけだった。
水槽に近付き覗いてみるとそこには起きているのか寝ているのか分からないほどゆったりと泳ぐ魚たちだった。
どこかポカンとした顔をしていてその顔を見ていたら少し可笑しく思えてきた。
「この子たちは普段からこんな顔なんですかね?」
「深海は暗いらしいから殆どが寝ぼけて過ごしてるんじゃないか?」
「意外とたくさんのことを考えながら過ごしているのかも知れませんよ?」
「例えば?」
「明日のご飯とか今日の寝床とか?」
「結局ニートみたいなことかよ」
「ふふふ、そうですね」
霧さんと並んで順番に水槽を見ていく。深海に住んでいるだけあって普段は見たことの無い姿の魚が多く、夢中で見入ってしまった。
「澪っ!」
「えっ?うわっ!」
あまりに夢中だったもので足元に注意が言っておらず段差で躓いてしまった。
「手、繋いでて良かったわ」
「あ、ありがとうございます」
転びそうになったところを霧さんが支えてくれたお陰で怪我をせずに済んだ。
つい先程も同じことをして痛い目を見たばかりなのに本当に学ばない自分に嫌気がさす。
「本当に何度もご迷惑をおかけして……」
「本当に本当だわ。そんなに危なっかしいとこの手はいつまでも離せそうにないな」
「そ、それとこれとは別問題では……」
「とにかく転ぶなら俺の手が届くところでしてくれよ?」
「……善処します」
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