第4章

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水族館の順路もある程度進んでようやく終わりが見えてきた。 この水族館の最後はたくさんのクラゲたちがいる水槽で締められており、水の中を優雅に漂ったクラゲたちがお見送りしてくれる。 その姿に夢中になる人たちも多く、出口付近だというのに人集りができていた。 私もその1人で静かに漂っているクラゲの姿を見ていると今日までの疲れが癒える気がしてくる。 「クラゲ気に入ったのか?」 「気に入ったというか見てると癒されません?」 「確かにな」 しばらく霧さんとその光景を和めていたがポーチの中にしまっていたスマホが鳴っているのに気づき慌てて取り出して見ると会長からの電話がかかってきていた。 「はい、もしもし」 「《もしもしじゃない!今どこにいるんだ!?》」 「水族館の中ですけど……」 「《どんだけ時間かかってんだよ。お前以外とっくに出てきてずっと待ってんだけど?》」 「……えっ?」 会長に言われて時計を見ると時間は16時過ぎを表示していた。確か最後に時計を見たのはここに入る前でその時は14時半ぐらいだったから…… 「も、申し訳ございません!!すぐ出ます!」 まさかそんなに時間が経っているなんて思わず急いで電話を切って霧さんと一緒に水族館を出た。 あの後メッセージで皆がいる場所を送ってもらい何とか合流した。 「お、お待たせ致しました!!」 「お前は……時間かかってるならそう連絡しろっ……て、なんで霧さんがいるんだ?」 「たまたま会った」 「たまたま……」 「手を繋いでるのもたまたま?」 「手……っ!霧さん!水族館出たのでもう大丈夫です! ありがとうございました!」 会長の視線が繋がれていた手に向けられ慌てて離す。さっきまでとは違いその手はすんなりと離れて少し寂しく思った。 「こいつが迷子になりそうだったから繋いでたんだよ」 「あー、みっちゃん迷いそう……」 「そんな簡単に迷いませんよ!!」 誤魔化すためとはいえ霧さんに迷子扱いされ何故か華園にも納得されてしまった。
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