第2章

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さっき帰ってきてはいたから、この時間だとおそらく書斎にいるはずだ。正直、あの人の力を借りるのは嫌なんだがこればっかりは俺では分からないことだから聞いた方が早い。 目的の場所に到着して扉をノックすると中から「どうぞ」という声がした。 部屋の中に入ると一人の男が机に向かい、書類を仕上げていた。その男は俺の姿に気づくとペンを置き、こちらに目線を向けた。この男こそ俺の父であり、志藤グループのトップに立つ人物だ。 「珍しいな。大輝がこの部屋に来るなんて……何か用事か?」 「ちょっと聞きたいことがあったんだが……忙しそうだから出直す」 「気にするな。可愛い息子のお願いより大事なものなんてないぞ!どんなお願いだ?欲しいものがあるならなんでも買ってやるぞ!父になんでも言いなさい」 「お願いじゃなくて聞きたいことがあるって言ってるだろ。バカ親」 だから頼りたくなかったんだが、これでも仕事をしてる姿はかっこよく見えて尊敬できる……のだが何故か家族のことになると甘々になるのが玉に瑕な人だ。 けれどこのことに関してこの人ほど適任な人はいない…… 「伽々里家について親父が知ってることを教えてほしい」 「伽々里だと?なんで急に?」 流石に親父も俺がこんなことを聞いてくるとは予想していなかったのか少し驚いていた。伽々里家とは直接的に取引をしたことはなく、志藤グループとはあまり関わりがない家の一つだ。それ故になぜ知りたがっているのか分からないのだろう。
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