第2章

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~副会長(澪)side~ 嫌だ嫌だと思いながらも朝は来てしまうもので、結局殆ど眠れなかった。 本当なら今頃、学園に向かって、生徒会室で全員が揃うのを待っていた頃だろう。そして、その後バスに乗って遊園地へ向かうはずだったのだ。 ……なんて考えてしまうのは未だに諦めきれていないのかもしれない。どうにもならないことなのだから気持ちを切り替えなければ、また色々と言われてしまう。 スーツに着替え、荷物を持って食堂へ向かう。そこには父さんと慧兄さんがいた。新兄さんは会議があると言っていたから家を出たあとだった。 「随分と遅いな。慧は食事を終えて待っているぞ。早くしろ」 「……申し訳ございません」 家を出るにはまだ時間はあるけれど、父さんは慧兄さんよりも遅く起きてきた事に不満があるらしい。 確かにいつもより少し遅くなってしまったが、そこまで差がある訳では無いと思う。 もしかしたら無意識に小さな抵抗を示していたのかもしれない。しかし、あからさまに態度に出してしまうとどうなるか分かったものではない。最悪、学校にすら通えなくなってしまうかもしれない。それだけは避けなければ…… いつでも慎重に、ミスをしないよう完璧に装って、波風を立てないように息を潜めて…… それがこの家で暮らしていくために私が身につけた処世術だった。
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