第2章

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使用人が用意してくれた朝食を口にするが、どうしても喉を通ってくれない。それでも手をつけないわけにもいかず、無理やりにでも胃に詰め込んでいく。 この家での食事を美味しいと思ったことがない。学園で生徒会のメンバーで食べているご飯の方が美味しい…… 半分食べたところで遂に胃が食べ物を受け付けなくなってしまった。 気づいたら父さんも慧兄さんもいなくなっていた。残すのは申し訳ないけれど無理に食べて吐くよりはマシだろう。 「澪様。慧様がお車でお待ちです」 「わかりました。すぐに向かいます……ご飯、残してしまって申し訳ございません」 「いえ、構いません。もし量が多いようでしたら次から減らしますがいかがいたしますか?」 「……ではお願いしてもいいでしょうか?」 「承りました。それではいってらっしゃいませ」 カバンを受け取り慧兄さんが待っている車へ乗り込んだ。私が乗ったのを確認すると車はゆっくりと走り出し、今日予定されている視察先へと向かった。 「おい、あまり俺をイラつかせるなよ。ったく……新なら気を利かして視察先の状況とかを教えてくれるのにお前は何もしないんだな。少しは役に立とうとか思わないのか?」 「……申し訳ございません。えっと……今日行くのは……」 「はぁ……もういい。言われてからやるような奴の話なんて聞きたくない。黙って自分で確認でもしてろ。俺は俺で確認する」 「……かしこまりました」 車の中は苦痛でしかなかった。この空間にいることが耐えられない。早く時間が過ぎればいいのに……
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