第2章

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工場を出た後にも何ヶ所か周り、今日の視察はやっと終わった。 時計を見ると午後5時を過ぎており、オリエンテーションも何事もなければとっくに終わっている時間だった。 既に車に乗っている慧兄さんから早くしろという視線を感じた。 きっと怒鳴られるだけでは済まないとは思うが意を決して私は送りを断り、方向転換をして走り出した。 「澪!どこへ行く!!勝手な行動をとるな!」 慧兄さんが後ろから叫んでいるが聞こえない振りをして近くの駅へと向かった。 幸いにも最後の視察先は最寄り駅から徒歩10分もかからない位置にあるため駅にはすぐ着けた。昨日見ていた資料に最寄り駅が書いてあったのを思い出しながら駅構内へと入っていく。 ところが駅に入ったところで問題が起きてしまった。私がいる駅は特に大きな駅で、各線の乗り換えとして多くの利用がある駅だった。そのため改札口や切符売り場が複数あり、普段電車を利用することなど無いので、どこへ行けばいいのか分からなかった。 駅の入口で立ち止まったままオロオロしている私を見て、通り過ぎる人たちは不審な目を向けてくる。誰一人として助けてくれることは無かった。学園では多くの生徒たちに声をかけられる私でも一歩あそこを出ると肩書きなんて何も役に立たなくなる…… それはあの家での私みたいで、この世界でたった一人取り残されてしまったようだった。 (帰ろう……) 諦めて迎えの車を呼ぼうと駅を出ようとした時…… 「おい、ずっとそんなところにいると邪魔になるぞ。少しは端に避けるとかしろよ」 聴こえた声は少し低めの音で、それと同時にふわっと香ったのはタバコの匂いだった。
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