第2章

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「平気なフリが悪いわけじゃない。けどそういうフリをしたいならもっと上手くやれ。初対面の俺にすらフリだってわかるってことは、お前と近しい奴なら直ぐに気付くぞ」 「ふ、フリなんて……」 「してないって言えるのか?」 何も言い返せない…… きっと言い返してもこの人を納得させることはできないだろうし、墓穴を掘るだけな気がする。 結局、私は何も言えずに足元を見つめたまま黙り込むしかないのだ。 「……ったく。悪かったな。別にお前を否定してるつもりはないんだ」 「い、いえ……そんな風には思ってないです。私の方こそ申し訳ございません……お気遣い頂いてありがとうございました。そ、それではこれで失礼します」 早く立ち去ろう……これ以上ボロを出すわけにはいかない。私は早口で言うとそっとその場を離れようとした。 しかし、離れようとした私の足は思っていた方向とは全く違う方向へと動き出していた。 何が起きているのかがまだ理解できていないが、わかっているのは私の手を握り、先を歩くのは今まで一緒に居た男だった。 「あ、あの!どこに連れていくんですか!?」 私の質問には一切応えず、男はどんどん進んでいく。思っている以上にしっかりと握られてしまっているため、手を振り解こうにもそれができず、ほぼ引き摺られている状態になりながら男の後をついていく羽目になってしまった。 お互いに会話もないまま到着したのはある路線の改札口前だった。男は近くにあった券売機で切符を一つ買い私に押し付けると、先程の改札口前まで戻った。 「あの……何を?」 「Y駅は二番線から出てるS駅行きに乗って、ここから七つ目の駅だ。大きい駅だから急行でも各駅停車でも何でも止まる。お前が乗り越しさえしなければな」 「なんで……」 「俺はやる前に諦めることだけはしたくない。諦めるなら行動に移してそれでもダメだった時に諦める。お前もまだ可能性があるならまずやってみろ。うだうだ言うのはいつだってできる……まぁ俺の場合はダメでも諦めは悪い方だがな」 『諦めるな』……か。そんなこと思ったことなかったな。
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