第2章

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ホームに入ってきた電車に乗り込むと車内は帰宅ラッシュなのか、サラリーマンやOL、学生らしき人たちの姿がみえた。 たまたま扉の直ぐ近くが空いていたため、そこに立ち窓から外の景色を眺めた。 いつもだったら学園の生徒会室で業務をしている頃だろうか……それか家で机に向かっている時間帯だ。 まさか自分がこんな行動に出るとは昨日までは思ってもいなかった。 とても変な気分だった。 ここにいて電車に乗り、遊園地に向かっているのは確かに私なのに、ここにいて電車に乗っているのがどうしても私とは思えない。いつもと違うことをしているというだけで別人になったような気分だった。 なんてこんな変な事を考えているのは恐らく私だけなのだろう…… そう思うと少しだけ笑みがこぼれた。 帰ったら怒られるだけではすまないこともわかっているのに今だけは全てがどうでもいいような、そんな気持ちだった。 電車は定刻通りに目的地であるY駅に到着した。 この駅は片方の出口がほぼ遊園地と直結しているような造りになっているため、ここで降りる人はあまりいないみたいで、私を除くと各車両から1~2人だった。 それでも降りた人たちは遊園地出口とは逆方向の出口へと歩いていき、私だけが遊園地側へと向かった。 改札口を出ると遊園地のキャラクターらしき物の銅像やそれをモチーフにした噴水、色とりどりの三角旗など華やかな雰囲気になっていた。 日が暮れてきたため見ずらいところもあるが、それでも昼間であればここで写真撮影をしたりと一種のスポットになっているのかもしれない。 遊園地方面へと進んでいくと花で造られたアーチがありそれが入口へと繋がっているようだった。そのアーチを潜り抜けて入口へと向かう。 ゆっくり周りの風景を楽しみながら進んでいくと入口に着くまでに時間がかかってしまった。 入口は西洋風の造りでゲートができており、遠くにはこの遊園地のシンボル的なアトラクションであろうものが見える。 (着いた……けれど……) やっぱりというか遊園地は閉園後で人もいなければ明かりも全て消えていた。 期待はしていなかった。閉園時間は知っていたし、今更という気持ちで来たからこうなる事もわかっていた。それでも寂しいと思ってしまうのは仕方ないことなのだろうか…… 少しでもこの寂しい気持ちを無くそうと近くにあったベンチに腰掛けた。目を閉じて想像してみる……
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