第1章

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「澪、今日は慧(けい)と新(しん)と薬品開発部の視察だ。将来、少しでも二人の手助けが出来るようにしっかり勉強することだ。お前がいるのはただそれだけの為なのだからちゃんと役に立てよ」 「……分かっています。父さん」 父さんはそれだけ声をかけると兄二人と楽しそうに話を再開した。私にその顔を向けることはない。 食欲が無く味を感じることが出来ない朝食を無理矢理、胃に流し込み席を立ちエントランスで兄たちを待つことにした。 十分後、食堂から出てきた兄たちと玄関の前に用意されていた車に乗り込み伽々里が所有する研究所へと向かった。 車の中での会話などほとんど無く、重苦しい雰囲気だけが漂っていたが、研究所に着いてからは研究員の話に集中していたためそんなことは気にならずに済んだことは助かった。 視察がおわり、兄たちをそれぞれ配属されている会社へ届け一人になるとようやく一息つくことができた。 (やっと学園へ行ける……やっと息ができる……やっと開放される……早くあの場所へ……)
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