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念願叶ったバレンタインデーから2週間。朝学校に着くと、前の席の高梨が振り向き、笑顔で挨拶をしてきた。
今日も俺の彼女は全力でかわいい。
「ねえねえ、堺~」
「ん、なに」
「もうすぐね、好きな人の誕生日なの。どこにデートに誘ったら喜んでもらえるかなぁ。ひとりよがりになるのやだし一緒に楽しみたいから、アドバイスくれない?」
キラキラした大きな瞳が期待を持って俺を映す。一緒に楽しみたいと考えてくれる高梨の気持ちが嬉しい。
通学バッグから中身を取り出しながら、高梨に笑いかける。
「んーじゃあ、ふたりで一緒に相談して考えよ。どっか行きたいとこある?」
「それだと、結局あたしが行きたいとこになっちゃわない?」
「いいよ。高梨が楽しかったら俺も楽しいし」
「うん、ありがとう。んふふ、堺、大好き!」
「……いや、それ嬉しいけど、ここ教室だし場所考えて……」
俺たちの会話を聞いていたらしいクラスメートが微笑ましそうに……いや、ニヤニヤしながら俺たちを見ている。
バレンタインデーの後、何も言わずともクラスメートには俺たちの変化にすぐ気づかれた。どうやら、俺が高梨を好きなことも、高梨が俺を好きなこともバレバレだったらしい。
「デコボコカップル、やっとくっついたか」と呆れたように言われ、俺はこっぱずかしくて「別にいいだろ」とあしらうだけだったけど、高梨は幸せそうに笑って「ありがとう!」と言っていた。
高梨のこういう素直なところには救われることが多い。俺には高梨みたいな素直さは到底身につけられないけど、高梨にとって何か救いになれるものが俺にあればいいなと思う。とりあえず今の俺の目標は、いとおしい彼女の笑顔を守ることだ。
手を振り払うようにして「こっち見んな!」とクラスメートの視線を散らしたとき、高梨の手が俺の腕に遠慮しがちに触れた。
「堺、怒った? 呆れた?」
「ん? どこに怒る要素あった? 呆れてもねぇし」
「それならよかった! デート、どこがいいかな~」
わくわくと笑みを浮かべる高梨の頭の中はもう、俺の誕生日がある4月に思いを馳せているらしい。
でも、その前にはまだホワイトデーというイベントが待ち構えている。今の俺にとってはそっちのほうが重要で、ふたりで楽しめるような高梨へのサプライズを、密かにあれこれ考える日々だ。
でもそれはまだ、ここだけの話。
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