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「えー、知らないの?フェリーの中で貴志くんが見たいって言ってた丘陵地帯のイメージはね、あれはたぶん美瑛の丘のことだよ」
「え?あれ?富良野じゃないのかなあ」
「うん。富良野にもきれいな風景があるらしいけど、でも、タバコのCMとかいったらそれは美瑛だよ」
「へえーそうなのか。どうりで富良野で分からなかったんだな。で、ここからは近いのか?」
「うん。ここから富良野に行く途中なの。だから、明日は美瑛の丘めぐりをしてそれから富良野に行きたいの」
そう言えば、それで友紀が今日は旭川に泊まろうと言っていたような気がする。ということは僕らの予定と千賀子の予定は一緒だからたいした問題ではないだろう。
「どうなの?明日は?」
「OKだ。一緒に行こう。他の二人には適当に言っておくから」
「よかったー、丘めぐりするのに、レンタルサイクルじゃ、上り坂とかちょっときつそうだなって思ってたから」
あ、そういうことなのか。僕と一緒にいたいというより、バイクの方が楽だからなんだ。うーん、やっぱり女の子はちゃっかりしている。でも、僕は千賀子が好きだから、アシでもなんでもかまわない。
「あ、もうユースの門限だよ。帰ろう」
そう言うと千賀子は立ちあがった。僕もゆっくり立ち上がり、ふたり並んでユースに向かって歩いた。
「でもね、本当によかったのはね、こうしてまた会えたことだよ。ひょっとして私貴志くんに嫌われちゃったのかとずっと思っていたし・・・」
いきなり千賀子はそう言って笑った。
僕は胸にズンと響くものを感じた。
ひょっとすると、あとほんの一押しなのかも知れない。
「それは、ないよ・・・」
僕はそう答えたが、その先がどうしても言えなかった。僕は千賀子のこと、最初に会ったときから好きだったということが。僕には、あと一押ししてみる勇気がなかった。無邪気な笑顔で千賀子は続けた。
「でね、貴志くん。これってすごいことだよ。もう二度と会えないだろうって思っていたから」
「俺もそう思ってた」
「そうでしょう?まるで奇跡みたいだね。青葉の言っていた“いいこと”ってこのことだったのかなあ」
「はァ?何それ」
「青葉はね、ちょっと変わった力があるんだ。感が鋭いっていうか、霊感が強いっていうか・・・」
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