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「の、の、伸彦が帰ってきた」と教えた。
「ホントか!」と友紀は叫び、振り返って走りだした。そして、駐車場でバイクから荷下ろしをしていた伸彦を見つけるなり、「きさーん!なんばしょったとや!」と走りながら叫んだ。
いつになく友紀は興奮していた。伸彦もびっくりしたことだろう。なにしろ猛烈な勢いで走ってくる友紀が博多弁丸出しでわめいているのだ。こんな友紀の姿は初めて見た。逆に、ちょっと冷静になった僕はその様子を側から見ていて、思わず笑いがこみあげてきた。
友紀は伸彦に掴みかかるほどの勢いだった。僕はヤバイと思って友紀を羽交い締めのような格好で止めた。
「どうした?二人とも」と、僕らの心配などどこ吹く風というような感じでのんびりと伸彦が言った。
「俺たちがどれだけ心配したと思っとおとやー!」
そう叫んでは伸彦に掴みかかろうとする友紀を僕は止めながら言った。
「まあ、いいじゃないか。伸彦も無事だったことだし」
「あ、ごめん。ちょっと遅くなったかな」
伸彦は事も無げにさらりと言った。それを聞いた友紀は、緊張の糸がプツンと切れたかのように、
「ちょっとじゃないぞお」と言ってヘナヘナと崩れ落ちた。
伸彦が遅くなった理由は、笑えるようなゾッとするような、そんな変な話だった。
つまりは、こういうことだ。
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