第1章

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 大きな交差点で、右折信号が出た時に、先頭を走っていた友紀が信号停車中の直進車の右側を強引にすり抜け右折車と並ぶようにしてギリギリのタイミングで右折して行った。伸彦もそれに続く。僕は、一番後ろにいた事と、車にちょっと引っかかったのでやや出遅れ、右折のタイミングを逃してしまった。実はこの当時、免許証の減点が5点だったことも僕を慎重にさせた。信号が青になり、僕はゆっくりと右折した。しかし、いつもなら一人でも信号にひっかかった場合、その辺で待っててくれるはず二人が見あたらない。まあ、そのうち会えるだろうと思って進んで行くが、いつまでたっても見あたらない。どうやら僕ひとりはぐれてしまったようだ。  計画をたてた友紀が地図を持っているし、道順やフェリー案内などこの旅の計画全てを友紀に依存していたので、これは大変なことになった。    当時は携帯電話なんてなかった。はぐれたら、それきりだ。     とにかくこれ以上先に進むのは危ないと思い、通ってきた道を引き返した。  そして、とうとう集合場所だった友紀のアパートにまで戻ってきたが、誰もいなかったので、アパートの前でしばらく待ってみることにした。二人の方も僕がいないと気づいたらきっと ここに戻ってくるはずだ。  それにしても、まさか出発して15分くらいの間に、しかも地元の街の中でいきなりはぐれてしまうなんて想像もしていなかった。出発早々“いきなり迷子”などと言う“事件”を起こしてしまったなあなどと思って、おかしさがこみ上げた。    西の空には、きれいな夕焼けが広がっていた。  やがて、10分がたち、20分が過ぎ去ろうとしていた。  僕はさすがにあせってきた。ひょっとして二人は僕が先に行っていると勘違いして、そのまま進んでいるのかも知れない。なにしろ僕は普段のツーリングでも、先頭を走るサブリーダー(僕らのチームでは実力ナンバー2がサブリーダーとして先頭を走り、ナンバーワンはリーダーとしてみんなの様子を見渡せる最後尾を走るという取り決めがあった)が遅いと見るや、さっさと追い抜き好き勝手に飛ばしていく札付きの無法者だ。サブリーダーは、その時に参加したメンバーの実力を考えてペースメイクしているのに、だ。だから、また僕が勝手なことをしていると思われていても別に不思議ではない。日頃の行いがこんな時に祟るのかも知れないな。  さて、困った。
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