第1章

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 もし、このままずるずると時間が経てば、明日の夜のフェリーに乗れなくなって、僕ひとり北海道へ行けなくなるような気がした。そんなことを、友紀のアパートの外階段に腰をおろして、なんとなく西の空の綺麗な夕焼けを眺めながら考えてこんでいた。 辺りの空気は昼間よりも随分涼しくなったが、それでもかなり蒸している。 やかましいくらいに鳴いている蝉の声が遠くに聞こえている。  やがて、「しょうがねぇなぁ」と思って立ちあがった。  ここまで1時間近く待ってみて、二人が来ないということは、僕がまた勝手なマネをしていると思って走り続けているに違いない。ということは僕も今から、とにかく走って行けば二人に追いつくかも知れないし、最悪でも明日出発のフェリーに乗れれば、そこには必ず二人がいるはずだ。  道順も、情報も何もなかったが、とにかく走ればなんとかなるだろと思って、一人ではなかったはずの旅が始まった。  2時間も走っただろうか?  僕は北九州の街に入った。  福岡から見ると隣まちのような都市なのに、バイクでやってきたのはこれが2回目なので道がよくわからない。 事前に友紀からあらかた聞いた説明では、国道3号をこのまま北上して門司から下関へ関門トンネルで渡る。トンネルは一般国道だが、50の原付バイクは車道の下にある人道を押して渡らなければならない。しかし、同じ原付でも125のような原付二種は車と一緒に車道を走ることができるということだった。その後下関から山口へ行ってそこから主に国道9号で日本海側を走って舞鶴を目指すことになるらしい。  さて、先ずは関門トンネルを探さなければならない。  国道3号を門司方向へ走っていて、あまり、親切とは思えない標識のおかげで、うっかり高速道路のランプに案内されてしまった。125である僕のオートバイは当然入れないので、側道に逃げ込んだ。(125の悲しい習性だ)するとそこはアップダウンの激しい細い道路で、しかも住宅地の中を走っている。本当にこの道でも大丈夫なのかと迷ったが、後戻りするのは嫌なので、そのまま進むことにした。
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