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「…私だってドジでノロマな自分が嫌い。なのにどうしたって治らない。上手くいかないの。他の子のように上手く生きられない…。本当にどうしようもない人間なんだよっ」
そう言って笑う志保が、今どれだけ傷ついているのか俺にはわかる。
何故ならば、昔からそんな自分自身について志保は悩んでいた。
他人が言わなくても自分の短所を嫌という程に理解していた。
「…志保はしょうもなくねえよ」
「え…?」
「起きられないから、目覚まし時計を3個かけたり。すぐ筆記用具を無くすから必ずスペアを持参してたり。それは、志保が自分自身と向き合っている証拠だ。自分を理解して変わろうと努力している人間が、どうしようもないわけがないだろ?」
「大ちゃん…」
「お前が誰よりもわかっているだろ?お前自身がどれだけ悩みどれだけ努力をしているか。それなら、お前だけは自分のことをそんな風に言うなよ…」
「…うっ」
その瞬間、志保の顔がくしゃりと歪む。俺は嗚咽を漏らしながら泣き始めた志保の頭を優しく撫でた。
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