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何事かと思いながら急いで引き出しの扉を開けると、その中に入っていた箱に目を見張る。
「…これは」
金色のリボンがついた赤い箱。
その瞬間、懐かしい高校時代の記憶が蘇る。
「…私達のキューピット」
あれは17歳のバレンタイン。
突然現れた不思議なお爺さんのお陰で、二人は付き合うことになった。その話しを後から志保にしたら、お爺さんのことをキューピットとだと言った。
だけど、あの時に渡された箱も鍵もいつの間にか煙のように消えてしまっていたのに…。
何故か今。引き出しの中にあの時と同じ箱が入っている。
「…実は私、あの河川敷で死のうとしてた。虐められて辛くてそれで」
初めて聞かされた事実に胸が軋む。
だけどどこかでわかっていた。だっていくら志保でも、あんな真冬に川に入る理由はない。
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