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「…だけど、生きてて良かった。あの頃の私は、こんな幸せが待っていることを知らなかったの…」 志保は、この手を握ると優しく微笑む。 「…だから、過去の私を救って?」 「え?」 「…あのお爺ちゃんはキューピットじゃなくて命の恩人」 …まさか。 薄れた記憶の中で、ハッキリと覚えていることがある。 白いシャツにベージュのカーデガン…。今の自分も同じ格好をしていた。 「…これは、未来の私から過去の…大ちゃん…へ…」 その瞬間。志保の手から力が抜けた。 __ピーッ。 鼓膜から頭に抜ける機械音に唇を噛みしめる。 バタバタと部屋に入って来た看護士や親族に何も言わずに、引き出しから箱を取り出すと病室を後にした。
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