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「キミ」 空を見上げていた俺は声に反応するように視線を戻すと、いつの間にか目の前には見ず知らずのお爺さんがいた。 「え?俺ですか?」 顔に刻まれた皺の数と真っ白な頭髪から、年齢は80代位に見える。しかし何よりも気になったのは、白いシャツにベージュのカーデガンを着ているだけで、上着を羽織っていないということだ。 …寒くないのだろうか。 と、眺めているとお爺さんが金色のレーシーなリボンのついた手の平サイズの赤い箱を差し出した。 「そうだよ。キミに渡してくれと、ある人から頼まれてね」 そう言って優しく微笑んだ顔に、亡くなった祖父の面影が重なる。 「ある人?」 「キミの大切な人だ」 …大切。 真っ先に浮かんだ顔に自分で苦笑する。そんなわけはない。と、思いながら。
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