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学校に着くと既に朝のホームルームが終わっていた。原因はお爺さんと、下駄箱から流れでてきたチョコレートのせいだ。
一応、一つ一つ中身を確認してはまた下駄箱に戻すという作業は、思いの外時間が掛かってしまった。
そんなことをするぐらいなら本人に直接「くれ」と、言えばいいだけだということはわかっている。しかしそれは同時に「嫌だ」と、拒絶の言葉を聞く羽目になるということを俺が一番理解しているから、毎年地味な作業を繰り返している。
「…はぁ」
だから、バレンタインは憂鬱だ。
いくら沢山のチョコレートを貰っても、俺の心は満たされることはない。むしろ、満たされることがないということを自覚して余計に虚しくなるだけだ。
クラスメイトの女子からもチョコレートを貰って、男子達からは今年も「一番」と、いう謎のランキングをつけられて、全く楽しくも嬉しくもない一日が早く終わることを願っていた。
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