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体育館の裏から顔だけ出してみると、見えたのは水道で顔を洗っている横顔だった。 小さな両手で掬った水を、少し下膨れな顔にバシャバシャと豪快に掛けている。 飛び散った水が、肩で切り揃えられた髪の毛を濡らしていることも本人は気にしていない様子だ。 その姿は志保らしいと言えばそれまでだが、しかし季節は冬だ。 こんな寒空の下で、何故顔を洗っているのだろう…。 黙って見ていると、真っ赤になった手でブレザーのポケットからハンカチを取り出すと、ゴシゴシと顔を拭く。 そのせいで、一重瞼も小さな鼻もふっくらとした頬も真っ赤になっている。 「し」 いい加減に止めようとした僕の声は、ポケットから取り出したティッシュで鼻をかむ音にかきけされる。 …あれ? その姿に違和感を覚え、もう一度身体を引っ込めるとコッソリと様子を眺める。 しかしすぐに背を向けると、志保は校舎の方向へと走って行ってしまった。
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