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目を覚ますと、僕の家から程近いかかりつけの病院のベッドだった。
僕は恐る恐る手の甲を見るとミトンを思わせるように手全体が包帯に包まれていた。それから程なくに警察の事情聴取を受ける事になった。僕は包み隠さずに全てを話した。
「こんな下らない噂で学校に忍び込むなんてなんて悪ガキだ!」
はい、悪ガキです。友人も半べそをかきながら僕の寝るベッドの脇で事情聴取を受けていた。指を切った原因は音楽室にあったメトロノームが落ちてきたと言う何とも納得出来ない話になっていた。どれだけ噂を本当に実行して手の甲を切られたと言っても信じてもらえなかった。学校側が主張するピアノの上に乗っていたメトロノームの固定が甘かったと言う主張を信じている体であった。
傷が塞がり退院したその足で僕と友人は家族連れで学校に謝りに行くことになった。確かに悪いことをしたのは認めるが何か釈然としないものがある。
僕たちは一生分ぐらい家族共々米搗き飛蝗のように頭を下げた。そして帰りしなに僕だけがかつての担任教師に呼び止められてしまった。
「お前、手はどうだ?」
「まぁだジリジリしますし痛いんだか熱いんだかよくわかんないですよ」
思いきり嫌味ったらしい口調で言ってやった。せめてもの反抗だ。
「ここだけの話にしといてくれよ。お前には知る権利があるかもしれん。あんまりペラペラ喋るなら今のお前の学校にあること無いこと言うからな?」
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