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真実を教えたいのか脅したいのかどっちなのだろうか。僕は今の学校にも連絡が入り停学処分(放校処分)を受けることを覚悟していたのだが、温情から黙っていてくれるとの事だった。しかし、こうして脅迫のネタとして使ってくる所、罪の意識と下衆の根性がせめぎ合っていると言ったところだろう。
「実はな、お前で6人目なんだよ」
「え?」
「音楽室で『指くれ』って言われたんだろ? お前がやられる前にもう5人やられてるんだよ。お前がまだ最後にここにいた時の1年間にもやられてる奴いるんだよ」
僕がまだこの小学校にいた時にも被害者がいると言うのか。僕はこんな話は知らない。おそらくはまた口止めでもしたのだろう、かつての僕たちのように。相変わらずだと呆れるばかりである。
「ちょっと待って下さい。意味が分かんないんですけど」
「俺は幽霊とかオカルトなんて信じないけど…… 多分、あの子がやってるんだろうな」
「そんな馬鹿な」
「お前確かあの子と席隣だったよな? その縁か優しくしてくれたのかも知れないな」
僕の頭の中に一つの事が過った。あの子をこんな風にしてしまった音楽教師は今何をしているのかが気になった。
「あの、音楽の先生は? この前入り込んだ時に職員室を覗き込んだのですけど…… お見かけにならなかったのですが」
そう、僕が職員室の窓から覗き込んだ時、あの音楽教師はいなかった。正直なところ、あの根性の悪い顔はそうそう忘れられるものではない。覗き込んだ程度でもいるかいないかは分かってしまう。
「お前案外目ざといやつだな。あの先生はお辞めになったよ。単なる転任だ」
あの子をあんな目に遭わせた原因を作っておいて、自分はさっさと逃げたのか。胸糞の悪い話である。
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