10人が本棚に入れています
本棚に追加
音楽の授業の度にこの様な感じになり、彼女は音楽の授業がある日だけは学校を休む様になっていた。そんな最中、卒業生を送る会が開かれる事になり別に世話にも何もなっていない六年生を送り出す為のリコーダー演奏を僕たち五年生ですることになった。その練習の指導も勿論、音楽教師である。歌などであれば音楽の心得のない担任教師で十分なのだが、楽器を使う指導となれば担任教師の出る幕ではない。一日の授業の終わりしなに音楽教師が突如教室に入ってきて「これから卒業生を送る会の笛の練習しますよ」と、言いながら入ってくるのはもう恐怖としか言いようがない。
その練習でもやはり彼女は怒られた。ネチネチネチネチと運指が上手くいかない事に関してやはり叱責される。
「あなた実は低学年ね! その手の小ささ間違いないわ!」
今なら到底許されない発言であり、手が小さい事に対する侮辱である。
ちなみにではあるが音楽教師は別のクラスの担任をしている。友人の弟の所属する低学年のクラスを担当しているのだが、この際に「よの中にはからだの大きなひとも、小さなひともいます。からだの大きい小さいでからかったり、馬鹿にしたりしてはいけません」と宣っている。どうやらこの音楽教師は自分の都合で心も発言もコロコロ変える、ダブルスタンダードのろくでもない人間のようだ。
この侮辱が原因だったのかは分からないが、彼女は卒業生を送る会を迎えずに音楽室で首を吊って自殺した。だらんと垂れ下がった手の甲には茶色く変色し消えぬミミズ腫れの痕が残っており、そこからダラダラと血が流れていた。
そのぽたりぽたりと水滴のように落ちる先にはピンクのキャラクターものの封筒に入れられた遺書が置かれていた。
最初のコメントを投稿しよう!