【二】

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「なっ、特別に恐ろしい話じゃ無かっただろ?」 「……まあな。お前は、祖父さんに可愛がられていたのか?」 「うーん、微妙。ある意味、父親代わりではあったけど、鬼瓦だったしなー! あんまり一緒に何かをした、っていう記憶は無いんだよな」 「そうか……」  声に張りが無くなってきた。 「おい、大丈夫か? お前、もしかしたらこの手の話ダメ、なんじゃないか?」  少し間を置いてから、ボソッとか細い声で「俺は…昔から、超常現象の類は苦手だ。実体の無いものは、『怖いわけじゃない』が……苦手だ」と、苦虫を噛み潰したような表情で白状した。  意地っ張りだな、こいつ。『怖いわけじゃない』かよ。  それでも、最後まで聞いてくれたじゃないか、サンキューな。  話をしているうちに、すっかり眼が冴えた。  すると、今度はあいつが覆い被さってきた。  勿論、望むところだ!  今度はお前の番だな。  交換して張り替えたばかりのシーツはピーンとしていて、肌触りが最高だ。  ふたりは再びシーツの海にダイブする。  存分に楽しもう!  ふと、東の窓に顔を向けると、うっすらと空は白み始めていた――気の早い太陽の悪戯だろう。『悪いけどこいつは僕に夢中だ』嫉妬深い太陽に見せつけるように、激しい交歓の中……ふたりはシーツの海に溺れていった。
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