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【五】
休み明けの社内は、各地の銘菓名産と土産話で溢れ返っていた。
等しく回ってくる各地の特産品を前に、童心に返ったような擽ったさを感じる。
土産は古参の女性スタッフに渡すと、先ずは賞味期限を確認してから順に開封し始める。決して一日で全てを開封しない所が、ミソらしい。
開封後、ざっと数を数えてから等分に分ける。それらをさっさと各デスクに配布し、半端が出ると、綺麗な菓子箱に入れておく。半端分は、ランチ後に女性陣が『デザート』として召し上がるのだと言う――実に楽しそうに作業をしている。
休み中でも現場は稼働していたので、書類は山となっている。明日から休みに入る従業員からの引継ぎを受けたり――優先順位を決めて作業をしたつもりだったが、かなり多忙な一日だった。
持参する書類の確認を終え、何とか車に乗り込めたのは、午後5時半過ぎ。
「この辺、スゲー久し振りに来るな。随分と様変わりしてるように見えるけど、変わってない部分もたくさんあって、懐かしいなぁ」
あいつが外回りから戻ってきたタイミングで、そのまま出発した。
「あの角、あそこに墓地があるだろ? その信号を左に曲がれば有料駐車場があるぞ」
今日は、土地勘のある自分が予めプリントしておいた地図を片手に、助手席でナビをしている。ここは、祖父母の家の近所だ。
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