東京のオーロラ。

【序章】

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　同じ東京都でも、２３に分かれた『区』に住所地を構えていると『都心』に住んでいる、と言うらしい――そう知ったのは、中学に入学してからのことだ。
　電車だとたった一駅区間の違いだけなのに……少し不思議だった。

　物心ついた時から住んでいたのは、昔ながらの閑静な住宅街の一角。
　ワクワクするような芝生の庭がある、二階建ての祖父母の家。
　その家は、最寄り駅から徒歩１５分と少々不便だが、自然豊かで遊び場が豊富な地域だった。因みに最寄り駅周辺の住所地は、『都下』と呼ばれている。

　家の敷地は生垣に囲われている。
　それは『イチイ』という名前の常緑針葉樹で、寒くなりはじめると赤く肉厚の可愛い実が生る。食べると甘い実だが、種には毒があるせいか、幼少期には『食べられない実』だと教え込まれていた。

　祖父母の家では、母親と自分を含めた四人が暮らしていた。