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【終章】
「あのさ、もしもだぞ? もしも……東京で『オーロラ』を見たことがある、って僕が言ったら笑うか?」
秋の夜長――借りてきたDVDを観ながら、人肌に温めた紹興酒をチビチビ飲んでいる。ほど良く酔いが回り、好い気分だ。
先日、酒屋で紹興酒の棚の前で「ザラメを入れて飲むんだろ?」と聞いたら、「それは邪道だ」と一言に付された。『昔、まだ上質な紹興酒が日本に入ってこなかった時代、酸味や雑味がきつく飲みづらかったのをやわらげるため、甘味を加えて飲み易くしていた』のだと教えてくれた。
こいつは、全方位に博識なのだ。
確かに、温めた紹興酒からは芳醇な香りが漂い、口当たりもまろやかだった。
「で? 見たことがあるのか?」
「だーかーらー! 『もしも』って言っただろー」
真剣な表情で、射抜くような眼差しを向けて再度畳みかけて来る。
「お前は俺に、面倒な『嘘』をつくような人間じゃないだろ? だから、お前がもしも『見たことがある』と言ったら、俺は、『そうか』と答えるつもりだが。どうなんだ?」
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