遼太の災難~タイムリミット~

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 腕の中で可愛く鳴くひよを愛して……いた筈の俺がなんで今車運転してんだ?  深夜の国道。テールランプも疎ら。助手席に座るひよりの表情はわかんねーけど、バックミラーには。  グロッキー状態のオカン。  ミラーにはたまに、母さんの隣で困った顔をしているひまりさんが見える。顔の造作はひよとは違うが、時折見せる表情、特に眉尻下げた困った顔はよく似てる。  どうしてこんな事態に陥っているかというと、数十分前にさかのぼる。 「あ……でんわ……」  ひよに痛い思いは絶対にさせたくなかったから、大事に大事に、たくさん時間かけて、目一杯愛撫して……る最中、また電話に邪魔をされた。  世の中に電話なんて無ければいい、なんて思ったのは生まれて初めてだった。 「どうしよう……遼ちゃん……」 「出た方がいいな。おじさんだったらまた大変なことになるだろ」  そう言いながら、肩を竦めてひよの頭を優しく撫でた。
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