遼太の災難~ブレーキ~

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 自室でスーツの上着を脱いだ時。玄関のドアが空き「こんばんはー!」というひよりの声がした。  母さんへは律儀に挨拶して、パタパタと階段を駆け上がってくる。  1、2、の……、 「遼ちゃんっ!」  バッチリ3のタイミングで元気にドアが開き、ひよが飛び込んできた。  ネクタイを取ってワイシャツのボタンを外していた俺に抱きついてきたひよと一緒にベッドになだれ込む。 「ひよ……」 「遼ちゃん! 遼ちゃん! 遼ちゃん!」  俺に覆い被さる体勢の頬を紅潮させたひよ。だいたい言いたい事はわかる。  綺麗な髪の毛が乱れていた。手ですいてやりながら笑いかける。 「あのねっあの……」 「落ち着けって」 「会えたっ! 会えたのっ」 「あえた?」  意表をつく想定外な言葉に目を丸くした。
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