遼太の災難~ブレーキ~

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 思いのほか、強い口調になって、しまったと思った。大きく見開いていたひよの目から、一瞬止まっていた涙が堰を切ったように溢れ出した。 「遼ちゃんの……ばかぁっ! だいっきらいっ!」  思えば、〝大好き〟って言葉は昔から何度も何度もひよりの口から聞いた。でも、最近はその〝大好き〟の意味が深くなって凄く重みを増してきたのか、ひよはあんまり安売りしなくなった。  だから、ひよの〝大好き〟の意味を知ってからは、その貴重な言葉があの可愛い唇から聞けたら、それこそ幸せで。 〝大嫌い〟?  初めて聞いたぞ、その言葉。  いや、昔何回か女に言われて、同時にビンタとか喰らった事もあった。けど、そんな衝撃と比べ物にならない破壊力を持ったひよの口から初めて放たれた〝大嫌い〟だった。  ひよが消えたドアを、呆然と眺めてた俺には、追いかける気力すらなかった。  どうしてこんな事になった? ひよ!  俺、せめてあと2、3年遅く生まれたかったよ。後先考えたりせずに突っ走る事ができたら、こんなに苦しまずに済んだのに。ひよりは俺のものだから誰も触るな! って、堂々と宣言出来たのに――!  
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