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▽エピソード・∞▽
「おい、どうした。しっかりしろ。」
そこは『ロッキー』のカウンターだった。
「何をうなされてるんだ。さあ、今から『ピンクシャドウ』に行くぞ。」
「うん?」
どうやら夢だったようだ。でも一体どこからが夢?
「なあ。」
ボクはヒデに尋ねた。
「その店にミウちゃんって子がいる?」
「何を言ってるんだ。おまいさんのオキニだろ?」
「やっぱりいるんだ。」
「いや、最近辞めたって言ってたよな。おまいさんが言ったんじゃなかったっけ?ずっと通ってたんだろ?」
「彼女って大学生だって言ってたよな。」
「そんなこと知るかよ。おまいさんのオキニの女の子のことなんておまいさんしか知らないだろう。彼女が辞めたから、新しいオキニを見つけに行こうっていうのが今日の趣旨じゃなかったのか。なんだ?まだ寝ぼけてるのか?」
「今日は何月何日だっけ?」
「ええ?十二月二十日だけど。それがどうした。」
「いや、なんでもない。」
「しかし、ミウちゃんってのも罪だよな。クリスマスを前に辞めちゃうなんて。たくさんの客がぼやいてるだろうぜ。」
ボクは未だに信じられない気持ちだった。夢にしてはリアルすぎる夢だったからだ。今目の前にある光景が現実であるとするならば、ボクはまだ彼女と数回ほどしか会っていないことになる。しかし、彼女のことを気に入っていたのは事実だ。
いったいどの場面が現実で、いつの時点が夢だったのだろうか。
それにしても恐ろしい夢だった。
夢の中での出来事。思い起こせばミサがとった行動には全て意味があった。
お店でデッサンを渡したとき、彼女が「キャッ」と声を上げたこと。それは彼女の胸元にロザリオのペンダントを描いたから。
ボクの部屋に来たときにリビングの中を見渡すように凝視していたこと。それはボクの部屋の中にロザリオを描いた絵がないか確認していたのかも。
そして彼女の名前が「クマノミサ」。頭に「ア」を付けると・・・・・。
そうだ、やっぱり彼女はバンパイヤだったのだ。
しかしそれは夢の中の出来事。ホッとするやら、淋しいやら。
ボクは彼女の餌食でも良かった。ずっと彼女と一緒にいられるなら、下僕でも奴隷でも何でも良かった。彼女の牙に咥えられながら、ヨーロッパを転々と・・・か。
それでも彼女の匂いをずっと身に纏えるならそれで幸せだったのかもしれない。そんな気持ちだった。
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