▽エピソードその一▽

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「オレの仕事は受けてくれたんだろ?なら、まずは手付金を払わなきゃな。いくぞ。おーいユウスケ、また頼むな。」 こんなことのために、店番をさせられるユウさんの気持ちってどんなのだろう。話の中身を聞いていないユウさんは、ニッコリ微笑みながら「仕方ないか」って言う顔をしてボクたちを見送っていた。 店を出ると、そろそろ町中がお歳暮戦線の準備を始めている。それが終わると次はクリスマスに忘年会とイベントが目白押しとなる。慌ただしい空気とざわついた人波を押し分けてボクたち一行は、ヒデの馴染みという店へと向かっていた。 「オレのオキニはカレンちゃんっていって、胸はあんまりないんだけど、もうあそこが濡れ濡れで、この間なんか潮を吹かしてやったんだ。」 一瞬何の話をしているのかわからなかったが、ヒデの指の格好や動きからして想像できる事は絞られていた。 「あの店は下も触ってOKなのか。珍しいな。」 「全部の女の子に許されるわけじゃないですけど、運が良ければ・・・ですね。」 「ほほう、イイ子に当たればいいけどな。」 そんな会話を交わしながら歩く二人の後をトボトボとついて行くボク。特にウキウキする理由もないのだけど、前回の妖しげな雰囲気に興味がないわけでもなかった。 やがて繁華街のアーケードを何度か曲がると、ヒデは次の角でアーケードを横断する道路の先を指差してコッチコッチと手招きをする。 「この店だよ。」 その店はまさにありがちな四角いピンクの看板で、『ピンクシャドウ』と書かれてあった。 なんとかビルというのだろう、エレベータで三階まで昇り、扉が開くと目の前に先ほど見かけたピンクの看板と同じ電飾の看板がチカチカと輝いていた。 もう、相当な馴染みなのだろう、先頭を切って入っていくヒデは、待機していた黒服のボーイに三名であること、そしてオキニの指名を告げた。ケンさんも二度目というだけあって、前回と同じ女の子を指名したようだ。 「アキラはどうする?って言っても何にもわからんよな。ボーイさん、ブロマイドある?」 そういわれてボーイが取り出したのは、この日出勤している女の子のリストになるのだろう、何枚かのブロマイドを取り出した。そのブロマイドには顔こそ映っていないが、妖しい衣装を身に纏った女の子たちの怪しいポーズの写真が重ねられていた。
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