▽エピソードその十一▽

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「もうヘルプに行かなくてもいいんだね。」 「うん。」 ボクはミウとして最後となる彼女をしっかりと抱きしめた。ミウもボクの唇に吐息を投げかけてくれる。 しばらくの間そのぬくもりを確かめた後、足元の紙袋から例のプレゼントを取り出した。 「はい。とりあえず、ここの卒業祝い。」 「なに?あけてもいい?」 「うん。気に入ってもらえるかわからないけど。」 ミウは包装紙を丁寧に剥がし、中の額縁を覗くと驚いた様に「キャッ」と声をあげる。 一瞬ボーイさんがこっちを向いたようだが、それに気が付いたミウはボーイが駆けつけて来るのを制止した。 「びっくりした。これ私?」 「うん。あんまり上手くないけどゴメンネ。でも、どうしてもミウちゃんの絵を描きたくなって。いらなかったら捨ててね。別に構わないから。」 「捨てたりしない。大事にする。ありがとう。」 そう言って再びボクの首に腕を回し、やわらかな唇を提供してくれる。ボクも彼女の匂いと肌の感触を確かめて、グッと引き寄せる様に抱きしめた。 いつものように首筋から胸元へとミウの匂いを確認していく。妖しい香りがボクの鼻腔を通り、脳天を突き抜けていく様だ。 いつの間にかボクの手は彼女の丘陵を探索していた。肌の温度が手のひらから伝わってくる。その温度を跳ね返すようにじっとりと湿り気を帯びてくると、今度はボクの手のひらが熱くなり、その熱を彼女の肌へと返していく。 「うふふ。アッくんの手のひらってあったかい。」 「血が滾ってるからかな。」 「狼みたいになるの?」 「なりたいね。」 「今日はまだダメよ。」 なんとも意味深なセリフだった。 「いつならいいの?」 「内緒。」 ボクはその続きの言葉を聞かない。 その代わりに膝の上に乗ってくれるようにリクエストする。 さあ、ボクの目の前には楽園のような丘陵公園の光景が広がっている。まずは小さな谷間に挨拶を施し、そのぬくもりと匂いを確かめる。絹のような肌触りが心地よい。 「女の人の肌って、どうしてこんなに綺麗なんだろうね。」 「そう?みんなそうなの?」 「みんなっていうほど他を知ってるわけじゃないけど、スベスベして、あたたかくて、弾力があって、とっても抱きしめたくなる。」 「他の女の子でも?」 「今はミウちゃんだけ。もう一度告白してもいい?大好きです。ホントに大好きです。ボクの恋人になってください。」
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