▽エピソードその十一▽

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「だってもうお客さん、あんたたちとあと一組しかいないもん。だからちょっとからかいに来たのよ。今日でミウちゃんおしまいでしょ?あなたももう来ないでしょ?だから挨拶がてらにね。」 「色々とお世話になりました。もう来ないと思います。」 「来たらすぐにミウちゃんにチクってやるから、覚悟しておいてね。」 「はい、肝に銘じておきます。」 するとミカさんはボクのホッペに「チュッ」とキスをして席を立つ。 「ミウちゃん、もっとこの人に甘えなさいね。いい人よ。」 「はい。ありがとうございます。」 ミウは素直に礼を述べた。 「アッくんの鼻の下が伸びてた様な気がしたのは気のせい?」 「もちろんだよ。」 「でもミカさんも綺麗な人だもんねえ。」 「ボクはミウちゃんが好きなんだよ。ミカさんがボクのホッペにキスして、少しは妬いてくれた?」 「うん、とっても。」 そんな彼女の右手は、ボクの手の甲を軽くつねっている。 ボクはその手を反対の手でそっと上からかぶせるようにして握りしめる。 「ボクもキミが他のシートへ行ってる間、ずっとハラハラしてたんだよ。」 「これからは、ずっとアッくんと一緒にいるから。」 ボクは彼女の肩を引き寄せて、彼女の髪をなでた。セミロングの髪がふわっと揺れると同時に、優しい香りがボクを包む。 気がつけば彼女のわずかばかりの衣装は、胸元が大きく開かれ、セクシーな谷間がボクを誘惑していた。 「またちょっと甘えてもいい?」 ミウは何も言わずにボクの頭を抱え込んで胸元に引き寄せた。 ボクは柔らかな胸元の肌に軽くキスをして、同時に彼女の匂いを満喫する。 ビキニの上からではあったが、美しい丘陵とその頂点にもそっと手を添えていた。 「こうやってるとアッくんって可愛いのね。」 「でも元来は狼なんだよ。だって普通の男だもん。」 「そうなの?アッくんの狼なんて想像できないよ。」
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